時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「あっ!響いている。反響している。共鳴している。私のパワースポッ


数年前に建てた念願の新居。毎晩寝泊まりし、西式体操や大気療法をし、土曜日は日本語教室をし、日本語の教案作りや予習をし、習字をしたり本を読んだりしています。
5m×8mの小さな家ですが、中二階(日本で言う屋根裏部屋)、囲炉裏、土間があり、間取り、窓やドアの位置や大きさ、庇の長さなど全て自分達で考えたこだわりの家です。私が初めて作った大型ストーブも快適です。
その家にはシャワー室は作りましたが、トイレは作りませんでした。それで家から少し離れた所にバイオトイレを作りました。何年か前にこのバイオトイレについて書きましたが、使ったら毎回自分で処理する方式です。外にあるトイレと言うだけで驚きなのに、この処理方法は可成りショッキングで受け入れがたいようで、私以外は誰も使いません。と言うか、多分私が使うから誰も使わないのかも…。
ところで、私は日本語の言霊をとても大切に思っていて、一人の時はいつも結構大きな声で「ありがとう。」を唱えています。トイレに行く時も例外ではありません。それが最近、トイレから家へ戻る時、「ありがとう」が反響する事に気づきました。自分の声が幾重にも重なって響き、耳にとても心地良いのです。
トイレを作ったばかりの頃は響いていませんでした。4年以上の年月が流れ、周りの木が声を反響させる様に成長したのだと思っています。面白いのは家からトイレへ行く時は響かずに、トイレから家へ戻る時に響くのです。
あんまり気持ちがいいので、時々立ち止まって何度も「ありがとう」を繰り返します。もし誰かに見られたら、ちょっと恥ずかしい気もしますが、幸い誰も通らず、木々が遮って周りからその場所を見られる事もありません。ただ声は隣近所に聞こえる様で、「時子はいつも歌っている」と言われた事が有ります。
ここへ来て24年目。本当に色々あって、自分を取り巻く状況は想像外に変わったし、これから先も絶対に、今まで以上に変化があると思います。正直言うと、まだ時々ほんの少し不安になる事があります。でも「心配ばかりして人を恨んだりもして来たけれど、何があっても何とか立ち直れたじゃない。だから絶対に大丈夫。もっともっと面白くなるよ。」とそれを打ち消す事ができる様にもなりました。
ありがとうの言葉が響くのは、「面白く一緒に生きていこうよ。」と木々が声を掛けてくれているんだと思っています。
みんな優しいなあ。有難いな。ここにいられて幸せだなあ。
ありがとうが響くこの場所は、私の大切なパワースポットです。大声でありがとうを繰り返そうと思います。
クロッカスが咲き始めようとした日、また雪が降りました。雪の中でもしおれる事もなく元気な姿に感激しました。